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国立新美術館「モダン・アート,アメリカン」-珠玉のフィリップス・コレクション-

Posted in Art exhibit,New! by Administrator on the October 28th, 2011

東京六本木の国立新美術館で2011年9月28日(水)~12月12日(月)まで行われている「モダン・アート, アメリカン」―珠玉のフィリップス・コレクション-についてです。

ここしばらくは日本と米国東海岸への旅が続き、KYFAのブログのアップデートができておりませんでした。本ブログをフォローしていただいている皆様にはご心配していただいたりして大変申し訳ありませんでした。

さて、今回ご紹介しますのはアート鑑賞にぴったりの時期に行われている本企画で、私が個人的にも興味を持っているアメリカのモダンアート(19世紀半ばから1960年代)のコレクション紹介です。

ヨーロッパ文化の流れをくむアメリカ美術界は20世紀初頭にそれまでのヨーロッパ美術からはかなり飛躍した前衛芸術に大きく感化されます。

フィリップス・コレクションは鉄鋼業で財を成したフィリップス家の三代目ダンカン・フィリップスとその妻マージョリーが収集した個人コレクションがもとになっています。

1921年にアメリカ初の近代美術館として一般公開されて以来、ルノワールの代表作のひとつ《舟遊びの昼食》をはじめ、西欧近代を中心とする優れた作品群で知られる同コレクションは、その一方で、当時まだ評価の定まっていなかった同時代のアメリカ人作家の作品を積極的に購入し、ジョン・マリンやエドワード・ホッパー、スチュアート・デイヴィスら、後にアメリカの代表的作家として認められた若い芸術家を支援したことでも知られます。

今回の国立新美術館が行っている「モダン・アート,アメリカン」展はフィリップスコレクションの中でもアメリカの「モダンアート」に焦点を当て、19世紀半ばからアメリカン印象派、アメリカン・モダンを経て戦後のアメリカ絵画隆盛期までを網羅します。

本展覧会のタイトルとも一致し、目玉作品の一つとしてはエドワード・ホッパーの「日曜日」があげられるのではないでしょうか。

エドワードホッパーは都会の街並みやオフィスで働く人々、映画館、ガソリンスタンド、田舎家など見慣れた都市や郊外の風景と人々を、単純化された構図と色彩、大胆な明暗の対比、強調された輪郭線で描き出したことでよく知られています。

「日曜日」 エドワード・ホッパー

本展覧会の展示作品「日曜日」は1926年の作品。

ここではアメリカの狂騒の20年代ではなく、日曜日で閉まった店の前で何をするともなくタバコを吸う一人の男が描かれています。ホッパーが描き出す人物はその表情からは喜怒哀楽などの表情は読み取れません。そこには都会で生活する者の孤独感のようなものが表現されているのみです。

また、ホッパーのもう一つの作品「都会に近づく」は地方から都会へと向かう旅人の今まさに都市のトンネルへと入り、都会へと入らんとする気分の高揚と、歴然と立ち並ぶビルとその隙間から少しだけ見える青い空に孤独や不安を感じざるを得ません。この絵には人物はいません。作品を観る人が旅人と同じように感じるようになっているのだと思います。

「都会に近づく」 エドワード・ホッパー

また、アメリカの女流画家として最もよく知られるジョージア・オキーフの作品、「葉のかたち」も展示されています。オキーフは植物や自然、サウスウェストをモチーフにし、独特の官能的表現を通して女性としての感覚・観点から作品を作り出しています。「葉のかたち」も画面いっぱいに広がる葉を幾重にも重ね、それぞれに異なる色、形が観るものを引き込む作品になっています。

「葉のかたち」 ジョージア・オキーフ

オキーフのもう一つの展示作品「ランチョス教会、No.2、ニューメキシコ」も彼女の作風のよく表れた作品と思います。オキーフは1917年にニューメキシコ州を訪れ、その美しさに魅了されます。また1949年からはニューメキシコ州サンタフェに居を移しました。「ランチョス教会、No.2、ニューメキシコ」は干し煉瓦と赤土で作られた教会を大地と繋がるかのように描いた作品で、柔らかい表現とその力強さが対比された作品となっています。

「《ランチョス教会、No.2、ニューメキシコ」 ジョージア・オキーフ

初めてアメリカからそのアート・ムーブメントを発した抽象表現主義を代表する画家ジャクソン・ポロックとマーク・ロスコの作品も展示されています。

ジャクソン・ポロックは現実の風景や姿形等を再現するのはなく、作家の描画行為の場(フィールド)としてキャンバスをとらえ、キャンバスを床に平らに置き、缶に入った絵具やペンキを直接スティックなどでしたたらせる「ドリッピング」という技法で制作で抽象表現主義を世界的なアート・ムーブメントにしました。

ポロックの展示作品「コンポジション」はポロックがその後の抽象表現主義作風を確立する前の作品で、ピカソの影響やシュールレアリスム表現が見られます。

「コンポジション」 ジャクソン・ポロック

マーク・ロスコの展示作品「無題」はロスコ作品としてよく知られる大型作品ではなく小品です。

この作品が製作された1968年はロスコが大病をし、医師から大型作品の制作を止められた年です。ロスコが描く世界は色と形が微妙に交じり合い内面から光が照らし出されているかのようです。巨大な作品と、観る者に作品と自分との間の距離感をなくしてしまわせる独特の柔らかい光の表現はロスコ作品の典型ですが、本展示作品も商品でありながらロスコが表そうとする世界を限られた大きさの中で表現したものだと思います。

「無題」 マーク・ロスコ

このほかにもフィリップスコレクションより計110点の作品が今回の展覧会では展示されています。

「モダン・アート,アメリカン」-珠玉のフィリップス・コレクション-は12月12日まで東京六本木の国立新美術館にて開催されています。もし機会があればアートの秋を満喫しに行かれてみませんか。