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エゴン・シーレの作品がロンドン・サザビーズで史上最高値を更新

Posted in New! by Administrator on the June 29th, 2011

二十世紀初頭のオーストリア人画家、エゴン・シーレの作品”Huser mit bunter Wasche ‘Vorstadt’ II”(カラフルな洗濯物がある家々 ‘郊外’ II)が6月23日のサザビーズ・ロンドンにて24.7百万ポンド(約32億円)で落札され、シーレの作品としては史上最高額となりました。

          

オークションの予想落札価格が22百万‐30百万ポンドでしたので、予想価格の下の方の落札ではありましたが、2009年に一旦冷えたアート市場の回復を裏付けるものとなりました。

この作品は1914年に描かれ、1918年に28歳でスペイン風邪にて夭折したシーレの最も活躍した時代の物といえます。

このオークションの売り上げは所有者のレオポルド美術館とシーレの1912年の作品”Wally”(ウォリーの肖像)の元の持ち主で第二次世界大戦中にナチスにより作品を略奪されたボンディ家の相続者に支払う和解金として使用されるそうです。

          
          [Portrait of Wally]

過去10年間では2006年に22.4百万ドルで落札された作品を含む(シーレ作品の最高額)わずか3枚のシーレの風景画しかオークションで取引されておらず、大変貴重な販売だったといえます。

因みに、同日に行われた印象派と現代アートの販売総額は97百万ポンドでした。また21日の行われたクリスティーズの同様なオークションでは140百万ポンドの売り上げでしたので、金融危機前のレベルにほぼ戻った結果といえると思われます。

エゴン・シーレは日本でも人気のあるアーティストですが、当時盛んであったグスタフ・クリムトらのウィーン分離派、象徴派、オスカー・ココシュカに代表される表現主義のいずれにも属さず、独自の芸術を追求した画家でした。シーレと同時期の画家グスタフ・クリムト(28歳年上)の作品が美しいエロスを表現した妖しく装飾的な美であるのに対し、シーレの作品は同じ人間のエロスでも極端にディフォルメされた身体に生々しい性を表現したものとなっています。

          
               
          

シーレの作品を見ると、美しくかつグロテスクであるところに人間の内面を描き出す不思議な魅力に心を打たれます。あからさまに表現される人間の性と生。また生まれてきたものが必ず出会う死。シーレの独特な表現は百年の時を経ても私達に衝撃を与えるものです。

          
               

シーレが自画像のためのスケッチに於いて述べている言葉が大変印象的ですのでこちらで紹介いたします。

「僕は思う。現代的な”芸術などありはしない。在るのはただ一つの芸術、永遠に続く芸術だけである。」 

          

マリリン・モンロー「伝説の白いドレス」

Posted in コレクション,New! by Administrator on the June 22nd, 2011

さて、本日は先日6月18日にカリフォルニア州、ビバリーヒルズで行われたオークション(競売会社プロファイル・イン・ヒストリー)で、映画「七年目の浮気」でマリリン・モンローが着用したドレスが460万ドル(約3億7千万円)で、予想落札価格の100万‐200万ドルを大きく上回り落札されました。

     

ニューヨークの歩道にある地下鉄通気口から巻き上げられる風でふわっと浮かび上がりモンローの魅惑的な脚が露わになるシーンは映画好きの人でなくともよくご存じのことかと思います。

このドレスは映画撮影の為にアカデミー衣装デザイン賞を受賞したデザイナー、ウイリアム・トラヴィラによってデザインされたもの。人絹(アセテート)製の白いプリーツスカートはマリリン・モンローのまねをする人がよく着ているので有名ですよね。

ウィリアム・トラヴィラはこの「七年目の浮気」の白いドレスに代表されるドレスの他に、「百万長者と結婚する方法」、「帰らざる河」など、モンローのセクシーな魅力を引き出す衣装のほとんどを彼が手掛けました。

このドレスは女優でハリウッド映画衣装のコレクターであるデビー・レイノルズ(「雨に歌えば」でジーン・ケリーと共演)がその他のハリウッド映画メモラビリアとともにオークションに出品したものです。デビー・レイノルズは1971年に20世紀フォックスからマリリンの衣装を全て購入した際、このドレスを手に入れていました。

このドレスにはいわくがあり、「七年目の浮気」でのこの白のドレスのシーンを見て激怒した当時の夫、ジョー・ディマジオはこの一件の2週間後マリリン・モンローと離婚してしまいました。

またこのオークションではマリリン・モンローの衣装では「紳士は金髪がお好き」で着用した赤のスパンコールドレスが予想落札価格の20万‐30万ドルを大きく上回る147万ドルで落札されたほか、

「ショウほど素敵な商売はない」と「帰らざる河」の衣装も合計120万ドルの値が付きました。

                
              

これまでのマリリン・モンローの衣装では1999年にオークションにかけられた1962年5月にジョン・F・ケネディー大統領の誕生日の際「ハッピー・バースデー」を歌った時に着用していた白いドレスが126万ドルで落札されたのが最高の額でしたから、その記録を大きく塗り替えたといってもいいでしょう。

因みに今回の「七年目の浮気」の白いドレスは電話でのビッターに落札され、オークションハウスへの手数料と税金を合わせると546万ドル(約4億3700万円)です。落札者の身元は非公開なので判りませんが、大変高いドレスの買い物であったことは確かですね。

他にもオードリー・ヘップバーンが「マイ・フェア・レディ」のアスコット競馬場でのシーンで着用したドレスも370万ドル(約2億9700万円)(予想落札価格20万‐30万ドル)、

エリザベス・テイラーが1944年の映画「緑園の天使」で着用した乗馬競技用の衣装が6万ドル(約480万円)、「クレオパトラ」の髪飾りが10万ドル(約8000万円)、

ジュディ・ガーランドが「オズの魔法使い」のスクリーンテストで着用したドレスとルビー色の靴がまとめて175万ドル(約1億4000万円)、

               
          

グレース・ケリーが「泥棒成金」で着用した衣装が45万ドル(予想落札価格3万‐5万ドル)、

ルドルフ・ヴァレンティノが「血と砂」(1922年)で着ていた衣装が25万8000ドル、

               

チャーリー・チャップリンが「チャップリンの失恋」でかぶっていた山高帽は13万5300ドル、

               

ゲイリー・クーパーの「ヨーク軍曹」(41年)の衣装が6万7650ドル、

               

マーロン・ブランドが「王妃デジレ」で着用した戴冠式での衣装が6万ドル、

               

マドンナが「エビータ」で着用した黒のイブニングドレスと靴が2万2500ドル、

               

マイク・マイヤーズが「オースティン・パワーズ:デラックス」で着用した衣装が1万1000ドルで落札されました。

               

今回のオークションの総売り上げは2280万ドルという結果でした。

現在ハリウッド(映画)関連のメモラビリアは大変高い価格帯で推移しています。やはり人気のあった映画、オスカーを受賞した映画の衣装や小道具などは大変強く、男優の物よりも女優の物の方が価格帯が高いように思われます。また、このようなメモラビリアの場合はドキュメンテーションとコンディションが大変重要です。

今回は往年のハリウッド映画関連メモラビリアのオークションでしたが、また面白いオークションがありましたらご紹介致しますね。

Marx&Zavatteroギャラリーの10周年記念「Sea Change」オープニング

Posted in Art exhibit,New! by Administrator on the June 17th, 2011

KYFAが提携するサンフランシスコのMarx&Zavatteroギャラリーが今月でオープン10周年を迎えるに当たり、6月11日から特別記念第一弾として「Sea Change」展を開催中です。11日はオープニングレセプションに行ってまいりました。

「Sea Change」展ではこれまでMarx&Zavatteroギャラリーが扱ってきたアーティストの選りすぐりの作品を展示し、同ギャラリーの10年間の変遷をたどります。

Part Oneとして6月11日から7月16日までに展示されるのは12人のアーティストの作品。複数のアーティスト達の作品を同時に展示することでMarx&Zavatteroギャラリーのユニークな視点と審美眼を見ることができるようになっています。

David Hervel
          
          ”Poke the Milky Way” 74″x32″x32″,
          dog taxidermy form & mixed media, 2011

この作品はデイビット・へヴェルの特徴的な、美しく、綺麗で、グロテスクという、どこか心の奥にざわめきを呼び起こすような作品です。卵から生まれ出た不思議な生命体は空高く舞い上がろうとしているかのようです。

David Lyle
          
          ”They Say that My Uncle is the Black Sheep of the Family”
       31″x28″, oil on panel, 2008

この作品では、いかにも幸せそうな1950年代の白人の家族がピアノの周りに集まって歌っているのですが、一人だけは黒人でアンクルサム(アメリカ合衆国を擬人化した架空の人物、通常は初老の白人男性)の格好をしています。作品のタイトル「私の叔父さんは家族の”Black Sheep”、”厄介者”、”面汚し”と言われている」で、かなりの皮肉が込められています。

Davis&Davis
          
          ”Bungee Baby” (Artist Proof) 49″x41″, c-print, 1996
          
          ”The Bettys” 24″x20″, c-print, 2001
          
          ”The Ralphs” (quadriptych) each 20″x24″, c-print, 1999

KYFAで以前からご紹介しているデービス&デービスの作品です。「The Ralphs (ラルフ家の人々)」は連作で、さすが4枚を一堂に飾るといかに面白いかがよくわかるものとなっています。

James Gobel
          
          ”It’s Not Easy to Let It All Go, But Once in a While it’s Good for your Soul”
       35″x24″, felt, yarn, rhinestones, & acrylic on canvas, 2011

ジェイムス・ゴベルはゲイカルチャーを軽妙に表現するアーティスト。フエルトで作られた作品はポップでキィッチュ。コンテンポラリーアート界でも注目のアーティストです。

Libby Black
          
          ”Brooke in Burberry” 72″x96″, oil on canvas, 2011

リビー・ブラックは現代のファッションカルチャーをその作品に取り入れることで有名です。この作品もバーバリーのトレンチコートを着るブルック・シールズが不思議な庭で一心不乱に庭仕事をしています。巨大な作品とひときわ目立つ色彩で、今回のショーの中で最も目を引くものとなっています。

Matt Gil
          
          ”Rubber Necker” 12.5″x11″x7″, aluminum & asphalt, 2011
          
          ”Space Walk” 50″x16″x11″, aluminum, stainless steel, & paint, 2011
          
          ”String of Beads” 120″x32″x24″, aluminum & paint, 2010

マット・ギルの作品3点です。最も大きい「String of Beads」は購入者の色の好みに合わせアーティストが後で色付けをするものとなっていて、色がいかに作品のイメージを変化させるかが面白いものとなっています。

Michael Arcega
          
          ”Conquistadorkes II”
       72″x54″x24″, manila folders, glue, & acrylic hardware, 2005
          
          ”Woodoodle 4″ 10″x10″, wood on archival board, 2010

マイケル・アセガの「Conquist a Dorkes II」はアーティストの身体に合わせて作られたマニラフォルダー(紙製の書類を入れる事務用品)製の鎧。巧みな技術で立体表現を体現しています。オープニングレセプションにアーティストが来られていましたので話を聞いたところ、この作品はアーティストの本国フィリピンと文化、人種の交流があった欧米のまじりあいを表現したものということでした。

Patrick Wilson
          
          ”Gladiator” 33″x35″, acrylic on canvas, 2011

パトリック・ウィルソンの作品。美しい色彩の調和と幾層にもなる絵の具の重なりから生まれる立体感。ウィルソンの作品は見ているだけでぐっと引き込まれるものがあり、見れば見るほどその作品に引き込まれ、時間や空間を忘れさせてしまうような魅力的なものとなっています。

Paul Paiement
          
          ”Hybrids I – Automeris Stereois”
       30″x49″, wall installation, acrylic on acrylic panel, 2010

ポール・ピアメントは昆虫を現代の電子器具デザイン細部をその絵画に取り入れ使って巧みに表現するアーティスト。近くで見ることで初めて気が付くような不思議な細部や、立体物にすることで生まれる微妙な視覚表現は見ていて飽きることはありません。

Stephen Giannetti
          
          ”Pond” 20″x16″, acrylic on linen, 2011
          
          ”Trompe L’oeil” 20″x16″, acrylic on linen 2011
          
          ”Ultramarine” 36″x36″, acrylic on linen, 2011

スティーブン・ジアネッティは様々な色を6層重ねる円を巧みにその絵画に表現しています。透明な色彩であるため重なった部分の色が微妙に変化し、不思議な視覚のトリックに魅了される作品です。

Taravat Talepasand
          
          ”Mullahs Ghost” 17″x4.75″x4.5″, porcelain & egg tempera, 2011
          
          ”Native Americans Beware of Native Influences”
       17.5″x12.5″, egg tempera & gold leaf on panel, 2008/2011

タラヴァット・タレパサンドはアメリカ生まれのイラン人。彼女はイスラム教文化とアメリカ文化の中で育ち、その矛盾やタブーを作品に表現
しています。

Tim Bavington
          
          ”The Modern World” 30″x30″, synthetic polymer on canvas on panel, 2010

ティム・バヴィントンのカラフルなストライプ表現はそのタイトルにある音楽から得られたもの。12色相で表現される作品は見ているうちに音楽がどこからともなく聞こえてくるようです。

「Sea Change」展は7月16日迄、サンフランシスコのMarx&Zavatteroギャラリーにて開催されています。チャンスがあれば是非直接ご覧下さい。また、ご興味のある作品がありましたら、お気軽にKYFAまでご連絡いただけますと幸いです。

映画・Midnight In Paris/「ミッドナイト・イン・パリ」とガートルード・スタイン

Posted in New! by Administrator on the June 10th, 2011

さて、先日はSFMoMAで行われている「THE STEINS COLLECT Matisse, Picasso, and the Parisian Avant-Garde」展について書きましたが、今回はちょうど時を同じくして上映されているウッディ・アレンの新作映画Midnight In Paris「ミッドナイト・イン・パリ」についてです。

なぜ時を同じくしてといったかと申しますと、この映画で主人公がパリの街で迷い込む1920年代のパリがちょうど前回のトピック「ガートルード・スタイン」の時代と重なり、ガートルード・スタインもこの映画に登場するからです。

簡単にこの映画のあらすじを書きますと、主人公はハリウッドで脚本家として働くギル(オーエン・ウィルソン)。彼は婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)とともにイネズの両親のビジネスに付き合いパリにやってきます。

ギルにとっては俗物的なハリウッドとは違い、パリは洗練された芸術・文化の都。しかし、裕福な会社経営をする両親を持つイネズにとってはパリは観光とショッピングの街。ギルがたびたび口にする「雨が降るパリが一番美しい」という言葉をイネズは理解しません。また、パリで偶然出会うイネズの憧れの旧友ポールは確かにインテリで洗練されているように見えるが、どこか画一化されたものでしかないように見え、次第に自分だけが浮いている存在になっていくギル。


そんなある日、友人のポール達とともにダンスに行ってしまうイネズとは別にパリの夜を一人ホテルまで戻ろうと歩いているうちに道にギルは道に迷ってしまいます。


歩き疲れて座り込んだ階段で12時を知らせる教会の鐘が鳴ります。

すると不思議なことにどこからともなく現れたクラッシックな車がギルの目の前に停まります。そしてその車から降りてきたのはこれまたクラッシックな服装で陽気にシャンペンを楽しむグループ。彼らに誘われるままに車に乗り込み、ギルはとあるパーティーに行くことに。。。

石畳のパリの街角をギルを乗せたクラッシクな車は走り抜けていきます。

そしてやがてこの不思議な集団と一緒にパーティーが催されているカフェへ着くギルが見たものは彼が憧れる1920年代のパリの黄金期そのもの。

そこでギルは「グレート・ギャツビー」を書いたスコット・フィッチジェラルドやヘミング・ウェイなどの大作家達の若かりし頃に出会います。ギルの目前で当時の文化人達が盛んに議論を交わし交流を深めている場面を目の当たりにし、ギルは自分がタイムスリップして1920年代のパリに来ていることに気が付きます。

また、陽気なこの仲間たちに連れられて、またクラシカルな車に乗り込んだギルはある邸宅のサロンを訪れます。実はその邸宅こそ、当時のパリで最も先端をゆく文化人、芸術家を招き、サロンを開いていたガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)の家だったのです。そこでギルは自分が書いた本の原稿をガートルード・スタインに読んでもらうことにと。。。

また、ギルはスタインのサロンでピカソ、マティス、ダリなどのアーティストと出会い、タイムスリップした黄金の1920年代のパリを満喫します。


「ミッドナイト・イン・パリ」では、パリの街が熟練監督ウッディ・アレンの腕にかかると誰もが恋に落ちてしまいそうなほどロマンチックで美しい場所として映し出されます。また、タイムスリップして出会う人々と過ごす1920年代のパリは何と活気に満ち、華やかな芸術に満たされている場所です。画面もどこかノスタルジックなセピアがかった美しい場面が続きます。

この映画を見ていると自分もギルになって当時のパリに行ってみたくなりました。

先日訪ねたSFMoMAのスタイン展とこの映画「ミッドナイト・イン・パリ」があまりにも良いタイミングで開催されたことでパリの1920年代という素晴らしい芸術の黄金時代にまた思いを馳せらせることとなりました。因みに、映画の中で出てくるガートルード・スタインの家は大変良く作られていて、本当に当時のサロンや壁に掛けられている絵までよく再現されています。また、ガートルード・スタインを演じるのはオスカー女優のキャシー・ベイツです。彼女が見せる男勝りなスタインはイメージそのものでした。

日本での公開はいつになるかわかりませんが、公開されるときには是非、ご覧になっていただきたい映画です。

SFMoMAの「THE STEINS COLLECT Matisse, Picasso, and the Parisian Avant-Garde」に行ってきました!

Posted in Art exhibit,New! by Administrator on the June 1st, 2011

5月21日から始まった「THE STEINS COLLECT Matisse, Picasso, and the Parisian Avant-Garde」展をサンフランシスコMoMAで観てきました。

実を言いますとお恥ずかしい話よく知らなかったのですが、スタインコレクションというのはアメリカの裕福なスタイン家の兄妹達(レオ、ガートルード、マイケルとその妻サーラ)が20世紀の初めにパリに住み始め、当時はまだ大衆には理解されていなかった前衛芸術、マティスやピカソなどの作品を集めたところから来ています。今回の展覧会で分かったのですが、彼らの経済的、精神的な援助などから、パリで花開いた当時の芸術革命に火がついたといっても大げさではないように思えます。

今回SFMoMA行われている展覧会は、現在は様々な理由で散逸してしまったマティス、ピカソ、セザンヌ、レノアール、ロートレック等などのスタインコレクションを一堂に集めての展覧会です。今回集められた作品の中にはマティスの「Blue Nude(ブルー・ヌード)」(ボルチモア美術館所蔵)と「Salf-Portrait(自画像)」(コペンハーゲン、スタテン博物館所蔵)やピカソの有名な肖像画「Gertrude Stein(ガートルード・スタイン)」(メトロポリタン美術館所蔵)などがあります。

Henri Matisse, Blue Nude: Memory of Biskra, 1907; The Baltimore Museum of Art: The Cone Collection; © 2011 Succession H. Matisse/Artists Rights Society (ARS), New York

Portrait of Gertrude Stein, 1906, Metropolitan Museum of Art, New York City

このように簡単に言葉で表すとあまりインパクトがありませんが、スタイン家のそれぞれの人物達が収集した作品の数々を目の前にすると、果たしてこの表現が正しいのかどうかは分かりませんが、これほどまでの作品を裕福ではあるけれども、超がつくような大金持ちではなかったスタイン家の人々の審美眼と先見性に、どこか背筋がぞっとするような興奮を覚えずにはいられませんでした。

スタイン兄妹ではガートルード・スタインが作家(著者)として有名ですが、1903年から1914年までガートルードと兄のレオの二人は共にパリで暮らしました。二人はセザンヌやルノワールなどの現代美術の初期作品の収集を始め、まだ当時は無名であったピカソ(ガートルードはピカソと友人になり、彼女自身や甥のアラン・スタインの肖像画を描いてもらっている)、マティス、アンドレ・ドラン、ジョルジュ・ブラック、フアン・グリスなど若い画家達の初期の絵画を収集していきます。


[上写真は1913年頃のスタイン兄妹のフルリュース通り27番のサロンの様子。壁にかかる絵画が、ピカソ、マティス、セザンヌなどであることが分かります。]

第一次世界大戦が始まる前、二人のパリ、フルリュース通り27番にあるサロンには、これらの画家やその他の画家および前衛 芸術家が惹き付けられました。

スタイン兄妹の収集品は、彼らがフルリュース通り27番で生活している間に開催された2つの展示会にも反映され、収集品を貸与したり、主役となった画家の援助をすることで貢献しています。1つめは1905年に開かれたパリ・サロン・ドートンヌであり、マティスやドラン等の一群の作品が原色を多用した強烈な色彩と、激しいタッチで描かれていることからフォーヴィスム(Fauvisme、野獣派)と呼ばれるようになる一派をパリの画壇に紹介して衝撃を与えました。スタイン兄妹はこの展覧会のすぐ後でマティスの「帽子を被る婦人」とピカソの「花籠を持つ少女」を入手しています。

また2つめは、1913年にニューヨークで開催されたアーモリーショーであり、当時のフランス現代美術がアメリカに初めて紹介され、賛否両論の大きな話題となりました。この展覧会は以降の美術界に限らず、アメリカに衝撃的とも言うべき大きな影響を与えたことは間違いありません。

また、今回の展覧会で初めて知ったことはマティスとピカソがスタインを通して1905年に知り合ったということ。展示されている作品の中にはピカソがマティスに対する競争心から描いたとされる作品や、ピカソがのちのキュービズムへと向かっていく契機の一つとなったことが実はアフリカン・アートを収集していたマティスのアトリエでアフリカのアートに出会ったことによるものであったことです。

Pablo Picasso, Head of a Sleeping Woman (Study for Nude with Drapery), 1907; Collection The Museum of Modern Art, New York

また、マティスが創造活動を行う上で精神的支えとなっていたのがそのアートをほかの誰よりも早く認めていたサーラ・スタインであり、マイケルとサーラが1907年にサンフランシスコ大地震のために帰国中、初めてアメリカにマティスの作品を紹介したことや、二人の40作品に及ぶマティスの収集作品がベルリンで展覧会に貸し出されている時に第一次世界大戦が勃発し、その作品が手元に戻ってこないことを悲しむサーラを慰めるためにマティスがサーラとマイケルの肖像画を描いたことなど、如何にサーラが深くマティスに影響したかなどが判りました。

Henri Matisse, The Girl with Green Eyes, 1908; oil on canvas; Collection SFMOMA

この展覧会は一度に全ての物を見ようと思ってもかなり難しいぐらいの量(絵画彫刻作品200点余り、その他資料、写真、ビデオ映像など)と質があり、また必ず出かけて行かなくてはいけないと思わせるものでした。この展覧会は9月の6日までサンフランシスコMoMAにて開催されています。その後、パリとニューヨークでも展覧会が開催される予定です。皆さんももし機会があれば、是非ご覧いただきたい展覧会です。