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コレクターはお甘いのがお好き -ウェイン・ティボー-

Posted in New!,Uncategorized by Administrator on the May 11th, 2011

先日ニューヨークのザザビーズでアメリカの著名なコレクターでギャラリストであった故アラン・ストーン氏のコレクションがオークションで販売されると言うことでしたので、結果がどうなったかを楽しみにしていました。


[WAYNE THIEBAUD: Oil on board, 20.8 x 25.4 cm]

アラン・ストーン氏は1960年にそれまでの飽き飽きしていた会社顧問弁護士業に見切りをつけ、ニューヨークに会社の同僚から借入した5000ドルを元手にギャラリーを開始。勿論、1954年にまだ彼がハーバード大学の学生であった時に既に抽象表現主義で活躍するデ・クーニングの絵を購入しているぐらいですので、元々アートに対する眼を持っていた人だと思います。ギャラリーをオープンしてからはストーン氏は当時、一般にはまだまだよく理解されていなかった抽象表現主義のアートに夢中になり、次々に才能のあるアーティストを世に送り出していきました。同氏は2006年に亡くなられ、2007年にはニューヨーク、クリスティーズでストーン氏のコレクションが第一回目のオークションにかけられ、予想を上回る売上げを記録したのを覚えていらっしゃるコレクターの方もいらっしゃることかと思います。

2007年11月クリスティーズ「Selections From The Allan Stone Collection」より

[Willem de Kooning (1904-1997), Untitled, Oil on board, 115.3 x 120 cm, Painted in 1942]-530万5千ドルにて落札

[Franz Kline (1910-1962), Untitled, Oil on canvas, 198.1 x 182.8 cm, Painted in 1951]-279万2千ドルにて落札

さて、今回のオークションはストーン・コレクションの第2回目のオークションですが、その売却品の数は42品と多くはないものの、ストーン氏がその第一人者として知られた抽象表現主義をデ・クーニングとともに代表するフランツ・クラインの作品やストーン氏がディーラーとして発掘、亡くなるまでそのギャラリストとして代表していたウェイン・ティボーの作品が多く競売にかけられるとあり、予てより多くのコレクター達が待ち望んでいたものでありました。

この中で、特に注目を集めたのはウェイン・ティボーの作品が一挙に18点もオークションにかけられること。

ティボーは1920年アリゾナ生まれのアメリカ人画家。10代の頃ウォルト・ディズニー・スタジオでカートゥーンニストのアルバイトをし、1938-1949にはニューヨーク・カリフォルニアでカートゥーンニストとして働きました。また第二次世界大戦中の1942年から45年まではアメリカ空軍のアーティストとして仕事をしています。その後、幾つかのカリフォルニアの大学で教鞭をとっています。その期間ニューヨークで研究休暇をとっている時にデ・クーニングやクラインと友達になり、ロバート・リヒテンシュタインやジャスパー・ジョーンズといったポップアートや抽象アートの影響を強く受けることとなります。この頃から、ディボーの有名な基本的な図形に注目をおいたケーキやパイなどのティスプレーをモチーフに描き出します。その初期にはあまり注目されていなかったティボーですが1962年にはパサディナ美術館の「New Painting of Common Object」展においてリヒテンシュタイン、ウォーホールなどとともにその後のポップアート界を築いていくこととなりました。


さて、今回のストーン・コレクションのオークションの結果ですが、競売にかけられた42ロットのうち非落札の3品を除く販売で当初の予想販売総価格32.8-46.8百万ドルを大きく上回るバイヤーズプレミアムを含む54.81百万ドル(約45億円)の売り上げを記録しました。

この中でウェイン・ティボーの18作品は予想合計価格の12.8-18.3百万ドルが最終的には全作品が落札され、合計で27.5百万ドルとなりました。

現在90歳となるアーティストの最初の競売作品は「Four Pinball Machines (Study)」(1962年、28.3 x 31.1 cm、オイル・オン・キャンバス)で344万4500ドル(予想70-90万ドル)で落札。この作品はまだ当時無名であったティボーの最初のニューヨーク個展をストーン氏が開催した頃の作品でした。


[Four Pinball Machines (Study)]

その他、ポップ・アート的作品「Pies」(1961年、55.9 x 71.1 cm、オイル・オン・キャンバス)は電話による落札者に400万2500ドル(予想250-320万ドル)で、


[Pies]

また「Various Cakes」(1983年、63.5 x 58.4 cm、オイル・オン・キャンバス)と題された作品はバーグルエン・アートディーラーファミリーの20代の御曹司で最近ニューヨークのブラックロックグループのファイナンシャル・アーティストとして雇用されたアレックス・バーグルエン氏により299万4500ドル(予想120-180万ドル)で落札されました。経験豊富なニューヨークのディーラーデイビット・ナッシュ氏がこの若い購入者-伝説的な故ハインツ・バーグルエン氏の孫でサンフランシスコのギャラリスト、ジョン・バーグルエン氏の息子-の隣に座り落札を手助けしていたということで、ここでもまた世代交代が進んでいるのが見受けられました。


[Various Cakes]

ティボーの作品がこれほど多く一挙にオークションにかけられたのは初めてのことで、ディーラーの中ではこれがティボーの価格に悪影響(作品過剰による一時的な価格低下)があるのではと心配されていましたが、結果をあけてみるとこの通り、下がるどころかかなりの価格上昇を及ぼしたといってよいかと思います。この中で、ニューヨークとロサンジェルスのグッケンハイム・アッシャー・アソシエイツでアートアドバイザーをするバーバラ・グッケンハイム女史はティボーの1969年製作「Nude, Back View」(高さ72インチ、オイル・オン・キャンバス)を142万6500ドルで落札した後、「ティボーはそれだけでマーケットになれるの」、「この絵は(ティボーの中でも)とてもユニークなの」と彼女が落札した裸婦画を持ち帰りながら「フロイトとその他全てのもの同じレベルに凄いものなの」と述べています。

ティボーの作品は昨今では2010年9月のGoogle12周年の日に会社ロゴが

となっていたことで覚えていらっしゃる方もいらっしゃると思います。90歳を迎えた今日でも筆を握る力は衰えを見せません。これからも「コレクターはお甘いのがお好き」で人気は高まるばかりです。今回のオークションの結果を見てあらためてティボーの人をひきつける力にあらためて驚かされました。

サンフランシスコではSFMOMAにティボーの作品がパーマネントコレクションとして収蔵されています。もし機会があれば是非直接作品をご覧になってみて下さい。


[Wayne Thiebaud: Display Cakes, 1963, 71.12×96.52, oil on canvas] SFMOMA

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