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フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル(ライト館) その2

Posted in New! by Administrator on the April 28th, 2011

さて、先日は「フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル(ライト館)その1で、現在愛知県の明治村に移築保存されている旧帝国ホテル中央ロビーについて書かせていただきましたが、今回はもう少し中に入ってお話したいと思います。

大変な完璧主義であったことで有名なライトは、旧帝国ホテルの建設の際もその完璧さを求める為の設計変更を度々繰り返し当事の経営陣との衝突が多くなり、ついには当初の建設予算150万円が6倍の900万円に膨れ上がるに至って、完成を前に解雇となってしまっています。ライトの建設予算と実際費用に関しては帝国ホテルだけではなく、その他数多くの例がありますので、ライトはクライアントを持つ職業人というよりも、アートの為にはクライアントはアーティストの言うがままになるべきだという感覚があったものと想像されます。


さて、そのような完璧主義者のライトだけあり、帝国ホテルの緻密な装飾デザインは天井照明、フロアー照明器具、家具、食器に至るまでホテル内の全てが統一されるものとなっています。ライトがデザインしたグラスや食器は今でもオールドインペリアルバーで使用されています。食器のデザインパターンである「Cabaret」と「Imperial」は後にティファニーが復刻版を作ったりもしました。今でも帝国ホテルに納品をしたノリタケから「Cabaret」パターンの食器は生産されています。



しかし、何といっても私が感動したのは屋外屋根の端にある銅板製のボックス型の天井装飾です。これは建物の外の装飾の一部ですが、屋根の庇にあたる部分に屋根からの水の流れをコントロールして雨水の流れ落ちる様を見せるようになっているそうなんです。

単に見た目のデザインだけではなく、そこに滞在する人に全てをライト流で経験させようというライトのアイデアには敬意を抱かずにはいられませんでした。


また、ガラスによって単に外部と内部を分けているのではなく、実はある意味中と外を繋いでいる役目を持つ窓枠とドアはは、縦横の桟の配置と金箔を挟んだガラスのアクセントでほんとうに美しいものとなっています。この金箔を挟んだガラスは旧帝国ホテルの様々なデザインに生かされている市松模様です。単なる四角いパターンの繰り返しのもかかわらず、あるときは日本的に、またあるときにはモダンに見え、和と洋をつないでいるかのようです。このデザインは京都桂離宮の松琴亭などを訪問し、日本の伝統文様や建築様式に深く感銘を受けたライトが、帝国ホテルをデザインするにあたりヒントにしたものと思われます。

このデザインは現在の帝国ホテルでもいたる所で使用されていて、そのオリジンが実はライトのこのデザインに由来しているというのはこの窓の桟を見るまでは実はよく気がついていませんでした。これなどは実際の建物を見て初めて実感できる感動かもしれませんね。

さて、最後に少し話は違うのですが、先日東京アメリカンクラブを訪ねた際に庭先にライトの帝国ホテルで使われていた大谷石壁彫刻の一部がひっそりとおかれているのに気がつきました。意外なところにこうやって残っているのに驚いたのを覚えています。

フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル(ライト館) その1

Posted in New! by Administrator on the April 23rd, 2011

東京に住んでいるときに私がとても好きな場所が帝国ホテルのオールド・インペリアル・バーでした。

こちらのバーでは旧帝国ホテルのデザインが生かされていて、一番奥のテラコッタの壁や大谷石は旧帝国ホテルのものがそのまま使われています。旧帝国ホテルの建物は1967年に閉鎖されホテル自体の建物は玄関部分が愛知県の明治村に残されているのみですが、日本滞在中に一度旧帝国ホテルの建物を見てみたいと思っていましたので、実際に訪問することが出来たときは想像以上に感動しました。

簡単に紹介しますと、旧帝国ホテル(ライト館)は20世紀を代表するアメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)によって設計され、大正12年(1923)の開業から昭和42 年(1967)新館への建替えまで、日本の代表的ホテルとして東京を訪れる国内外の要人に利用されました。帝国ホテルの全容は皇居を望む日比谷通り側間口約100m、奥行約150m余の広大な敷地に、正面中央の前池、中央玄関、二層吹抜きの大食堂、高層の劇場棟などの公共空間が連続し、それらを挟むように左右に全長150m・3階建ての客室棟が2列建つという構成でした。

設計当事ライトが好んでデザインしたのは意識的に低くした天井と段差を持つ床構成。旧帝国ホテルは全体計画から個々の客室に到るまで、ライトにより極めて多様な空間構成がなされ、それまでの建築空間が主として平面的なつながりであったものを、立体的な構成へと発展させた世界的に重要な作品と評価されています。

帝国ホテルはその設計のユニークさ、美しさもさることながら、その詳細部におけるデザインがそれまでのホテルデザインにはないものでした。ライトは帝国ホテル設計に当たり、その建築資材を探しに日本の各地を周り、最終的に彫刻された栃木県産大谷石を主体に常滑焼のスクラッチ煉瓦・タイルと幾何学模様の素焼テラコッタを様々に組合わせ、建物の内外を覆いました。

建築デザインは当事のライトが特に関心を持っていたマヤ文明をモチーフにしたデザインです。大谷石はその柔らかさと当事の日本職人の腕のよさが生かされ細かい緻密な細工が施されています。

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さて、実際に明治村に移設保存されたのはこの旧帝国ホテルの中央玄関ロビー部のみです。しかし移設された帝国ホテルを外から眺めると、改めてライトの設計したこの建物の美しさに感動させられるとともに、全容は如何なる物だったかと想像させられます。

この中央玄関は旧帝国ホテル建物の特色をよく残していて、軒や手摺に使われた白い大谷石の帯は水平線を強調デザインとなり、またその帯は奥へ幾段にも重なっている様はこれから続く内部空間の複雑さを予想させるものとなっています。中央玄関を入ると中央階段を少し上り、やがてたどりつくメインロビー中央は三階までの吹き抜け構造になっています。

中央玄関内の全ての空間はこの吹き抜けを中心に回り廊下で繋がる形で展開します。個々に分かれる空間は床の高さや天井の高さがそれぞれに異なっていて、空間構成の多彩さと、実際に巡り歩く人にドラマチックな視界の変化を楽しませる設計となっています。また1階中央ロビー左右ラウンジ前の彫刻された大谷石の壁面、四つの角に立つ透かしテラコッタと大谷石で装飾された内照明からなる柱やそれから続く大食堂(移転建物には無)手前の孔雀の羽とよばれる大谷石製の大装飾は見るものを魅了します。

また、中央ロビー左右から差し込む光りは複雑な建築構成ゆえに柔らかく複雑な装飾を照らしだし、幻想的な世界に誘い込むかのようです。

SFMoMAの”How Wine Became Modern: Design + Wine 1976 to Now”展

Posted in Art exhibit,New! by Administrator on the April 13th, 2011

カリフォルニアは皆さんもよくご存知と思いますが、ナパバレーなど世界的にも有名なワイン生産地です。

今回は現在SFMoMAにて開催中の”How Wine Became Modern: Design + Wine 1976 to Now”展のご紹介です。

現在のアメリカの生活では、ワインバーやスタイリッシュなワイングラス・デカンターなどを抜きでは考えられませんが、今のような状況になったのは実はそんな昔の話ではありません。今ではワインは単に飲むだけのものではなく(勿論飲むのが一番ですが)、その周辺のもの、例えばワイナリー、ワインの色、匂い、土、気候、その研究、ワインを使った絵画、フィルム等々、様々な分野でワインがデザインやアートとして現代の生活の中の一部となっていることをこの展覧会では表しています。

この展覧会の題名の一部となっている1976年とは有名な「1976年パリ・テイスティング= Judgment of Paris」を示しており、ご存知の方も多いと思いますが一応の概略を説明しますと、

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1976年5月24日、当時パリでアカデミー・デュ・ヴァンというワインスクールを主催していたイギリス人「スティーヴン・スパリエ」は、パリ・インターコンチネンタルホテルで、アメリカとフランスの最高峰シャルドネとカベルネ・ソーヴィニョン(主体)をブラインドテイスティング(目隠し試飲)会を開きました。各審査員が全てのワインを20点満点で評価し、採点表を集めて集計したところ全く予想外のことが起こってしまいました。

フランスの代表として「ラモネのバタール・モンラッシェ」や「シャトー・ムートン」のビッグヴィンテージが含まれているのにも関わらず・・・。カリフォルニアの赤、スタッグス・リープ ワイン・セラーズ カベルネ・ソーヴィニョン1973と、カリフォルニアの白、シャトー・モンテリーナ シャルドネ 1973がそれぞれ1位になってしまったのです。

当時はまだ、フランスだけが高品質のワインを生産する唯一の国であると広く信じられており、第一位に輝いたカリフォルニアワインは一緒にテイスティングされたフランスワインの1/4程度の価格で取引がされていました。フランスワイン界を代表する9名のフランス人審査員、彼等が誇りにしていたフランスワインよりも、当時彼らが「安物」と蔑でいたカリフォルニアワインを選んでしまったのです。このできごと以前は「最高のワインはフランスでしか生まれない」、「歴史的な序列は変えられない」と考えられていました。パリ・テイスティングは、歴史の浅い産地でも最上のワインを生産可能であることを証明し、フランスの後塵に甘んじていた世界中の生産者を鼓舞する結果となりました。

(以上は「ヴィノス やまざき ”ワイン業界が激震した「1976年パリ・テイスティング= Judgment of Paris」とは?」”からの抜粋)

これに基づき今回の展示はその1976から今と題されているわけです。

会場ではワインのラベルから、葡萄が育つ土壌、匂い、グラス、デカンター、現代建築家によるワイナリー設計、ワインが登場する映画、ワインを主題にした映像アートまで様々な作品が展示されています。

展覧会の様子を動画にしました。是非ご覧下さい!